3.1 2種の中国式ルール |
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中国式のルールは石の存在権を中心にしたものであって、囲碁の原始的な或は最も基本的なルールとして重要な意味をもっている。 従って地とハマを中心としたルールの研究のためにも、中国式ルールの成文化とそれによる種々の問題点の解明の結果を知ることは大きな意義がある。 中国式のルールは「盤上に存在する黒石と白石の数を比較する」ことに基本原理がある。 要するに盤面上に沢山の石を置き得た方を勝とするのである。石を除去するルールや劫のルールは日本式とまったく同様であるが、日本式のルールと最も大きく相違する点は
これは総ての問題を「打着によって解決する」ことが双方の損にも得にもなることなく自然に解決される良さがある。従って中国式のルールの成文化は極めて簡単であり、論理的にも何等疑問が発生する余地のないものにしうるのである。 ただし劫のルールは現行のものでは不充分であり、一般化して置かないと終局に問題を生ずる。この問題は中国ルールだけでなく、如何なるルールにも共通の重要問題であるので後に詳論することにする。 石の存在権の原理によると、第3-1-5図の如き状態まで打着を進めて終局とするのが、ルール上からの完全な終局といえる。(実際は第3-1-4図で終局として計算しても結果は変わらないから最後までの打着継続を省略することができる) |
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この第3-1図は9路の碁盤による呉九段と宮本(直)八段の実戦譜である。 |
第3-1-1図 |
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日本式の場合は、80手完として終わっているが、作るときは第3-1-4図の黒81、83の点に手入れを必要とすることになっているため、黒4目勝となる。 ここで注目すべきことは、中国流では
又もしが白石に置き換ったものとすれば、第3-1-6図となり白は自己の目の中に更に98、100を打着し得て盤面上の白石は2目増加する。すなわちは白を分断することによって2目の価値のある点になる。これが中国流のいわゆる切賃といわれているものである。双方にとって、連絡の点であれば4目の価値の点となる。 |
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もし終局の図に於いて、石の数に目の数を加えたものを比較すれば切賃の問題はなくなる。即ち第3-1-5図の96をもって両者のパスが連続して終局となった時、石の数と地の数の和をとれば切賃の問題がなくなる。ここに中国流の二つのルールが存在する理由がある。 |