5.7 合意の終局

5.1 節で述べた如く、中国式I、II、III或は日本式I、IIのいずれのルールで囲碁を行ったとしても、一方が連続して打着しても勝敗に無関係な断面が存在することを述べた。
その断面以後に解決を要する特殊形が存在する場合は勿論その断面以後に大変化が生ずる場合があるので、その断面をもって終局を規定するのは不合理であるけれども、普通の場合は特殊形が発生することは比較的少ない。その時はその断面で終局とみなして計算しても、ルール上の終局まで打着した結果と同じことになる。従ってその様な場合はその断面が実質的な勝敗の決着している点であると云うことができる。故にそれ以後の打着を進めなくても対局者が誤りなく計算が行える時点で、合意によって終局として計算を行うことは実際的であり、実用的にも重要な意味がある。
日本の慣習法はこのために、この断面を敢えて終局としようとしたところに非合理性を発生したと云ってよい。
新ルール案は特殊形のない場合は仮終局の時点で合意の終局とみなして計算することが可能であり、この場合は慣習法と殆んど差がないために、地とハマの計算に慣れている日本の囲碁ファンにとっては台湾式の盤上の石数と地による計算よりも便利と思われる。
中国式I及びIIのルールの持つ“偶数ダメの問題”を完全に解決する案として作られた台湾ルールがその特長も持ち、かつ地とハマによって計算する新ルール案Iと本質的に全く同等であるのであるから、ルールの表現形式上単純で理解し易い台湾式が国際ルールとして正式に採用されたとしても、“地とハマ”という概念が囲碁の進歩に重要な意味をもっていることを忘れてはならない。しかもそれに慣れている日本の囲碁ファンのためにも日本としては新ルール案Iを採用する方が良いものと考えるのである。

目次 ルール試案
前項