2.2 成文化の困難性

歴史的な慣習を出来る丈尊重しながら、ルールの合理化と成文化を行おうとする努力が払われてきたが、その最大の難所は“死”“活”“セキ”の定義にあった。研究が進むにつれ、それ等を如何に規定しても、それでは解決しない珍形が作られ、それを解決しようとすれば、又更にそれでは解決し得ない問題が提起されるということが繰返されてきた。
このために現在では多くのルールの研究家は“死、活、セキ”の定義を行わずに、ルールを作る方向に向わざるを得なくなったと云ってよいだろう。この過程を最もよく理解できる文献に、島田拓爾氏の「囲碁の数理」の著作がある。これは終戦前の初版と戦後の改訂版の二種類があるが、島田氏の思想の変遷と死活の定義の困難さを知るための極めて重要な文献である。これをここで紹介することが出来ないのは残念であるが、これから示す種々の例から、死、活、セキの規定の困難性を理解していただこう。

目次 ルール試案
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