2.3.5 万年劫 |
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第2-13-1図が一般の対局にもよく出現することのある万年劫の基本型である。 |
第2-13-1図 |
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これがルール問題として非常に着目されたのは、1928年秋の日本棋院大手合2回戦で瀬越七段(当時)対高橋三段(当時)の二子局に生じたからである。これは第2-13-2図に示す如き結果となり、瀬越七段は碁がよいからセキ同然であると考えていたのに対し、高橋三段は未解決な問題が残されている以上、勝負は決してついていないと考えていた。互に相手の意中を忖度しながらダメをつめていったが、結局その碁はダメを全部つめて瀬越七段が打つところがなくなり、着手放棄を宣言したのであるが、高橋三段は着手は権利でなく義務であると主張してゆずらず、大きな問題となったものである。 |
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ルールの成文化されていない時代のことであるから、それに対する色々な解釈があるのは当然のことであるけれども、いずれの主張も解釈もルールが明確化されていないのであり、しかも歴史的な判例も慣習もはっきりしないのであるから、決定的な結論が出る筈がなかった。然しこの対局は日本式ルールの成文化の気運を生ぜしめたことで重要な意義があった。この問題は交互着手が権利であるか、義務であるか、図の問題を如何に決着をつけるかというだけでなく、ルールの基本に触れる問題を提起したのである。 この万年劫は一般には途中において解決されるのが普通であるが、双方に小さな劫材しか残らない状態までその決着が延びた場合には上記の如き問題を生ずるのである。 |