4.2 手止りのルール化(1)

今回はこの台湾ルールの成文化を試みることにしよう。このためには手止りの定義を如何にするかに問題が集約される。
中国式では日本流のダメへの打着も1目の価値があるので、日本の慣習法の手止りの概念とは一般には相違することに注意しなければならない。
手止りの概念を一応分り易く表現すれば、“先着することによって利得となる最後の打着”と云うことができる。この表現は、その内容には差を生ずるかもしれないが、日本の慣習法にも或は中国式の場合にも適用し得るものである。
しかしルールの定義としては疑問が残る。それは“利得となる最後の打着”という表現が、碁を理解している人々にとっては比較的明瞭な概念であるけれども、ルールの定義としては適当ではない。

例によって手止りが案外明瞭でないことを示してみよう。
第4-1図は白4の後黒5としてaに味よく手入れしたとする。しかる場合黒5(a)の打着が手止りとなるか、白4が手止りであるのか、少しく厄介な問題が生ずる。この例は専門家が7-十一(a)の手が無劫として劫をツギ、白はb点にコスミ、以下白kで黒がつぶれた譜の一部を流用したものである。

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第4-1図

黒が誤らなければ黒の攻合勝になるのであるが、素人の場合、終局になってから、ああでもない、こうでもないと検討しなければ、黒aが必要か(必要ならば黒5が手止りとなる)或は不要で白4が手止りとなるか判明しないことになるのである。
第4-1図ではfをhに打てば黒がよいことを確められたい。従って黒aは不要であり、従って白4が手止りなのである。
第2の例として既に前回にも示した九路の碁盤による、呉九段と宮本(直)八段の実戦譜を検討してみることにしよう。
譜は勿論日本の慣習法に従って打たれたもので白80手で完となり、黒は左下の白を打上げて結果は黒4目勝となった碁である。中国式IIによれば黒5目勝であることを確められたい。
ここで第4-2-4図以後の打着を、中国式で進めてみることにすれば、第4-2-4図abcで終わる。

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第4-2-1図
第4-2-2図
白72=コウトル
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第4-2-3図
白78=コウトル
第4-2-4図

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