4.2 手止りのルール化(2) |
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ここで第4-2-4図のどの手を手止りとするのかを考えてみよう。普通は黒cへの打着を手止りと云うであろう。然し第4-2-5図の如く、白80を打着しないでパスしたとしよう。結果は同じ結果に終るのである。 |
第4-2-4図 |
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このことは次の如きことを意味している。“黒79の打着後は白には既に先着の利得がない”ことである。即ち白80をパスして先着を黒に渡しても結果が同じであるからである。 又白80を打着すれば黒81をパスしても結果が変わらないことを第4-2-6図で確められたい。 |
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又黒79をもしパスすれば左下の黒が劫に負けて全体が取られることを確かめられたい。従って黒79はパスが出来ない。即ち先着の効果があるのである。 この様に中国式のルールに於いては、一般にある時点で、黒又は白の手順で先着を譲っても、即ちパスをしても、それ以降の結果に全く影響のないときがあるのである。この先着の利得が失われた時が“手止り”とすべきものなのである。 故に第4-2-4図では黒79が手止りとなるのである。しかもこの79の打着以降白がパスをしても結果が同じであるとの白の判断を示す手段は、当然黒79の打着の次をパスすることによって示すことが自然であり論理的でもある。もし白が判断を誤っていれば、白がパスしたことは必ず損になるからである。 ここに手止りの定義は、ルールとして表現する場合には次の如く、 “ルール8 得点ルール……黒白夫々の置石数と地の格子点数の合計を比較して勝敗をきめる。但し最初のパスを白が行ったとき黒の得点は1/2を減じ、白の得点は1/2を加えるものとする”と規定することによって目的が果たせる。 このために終局のルールを次の如く修正する必要を生ずる。 “ルール7 終局ルール……最初のパスを除き、パスが連続したとき(2回)終局とする” このルールによって明かな如く、黒も白も先着の効が失われたと判断して、最初のパスを行えば、その直前の打着を手止りとするのであるから、黒が最初のパスを行えば1/2目減ぜられることがないため、±1/2目即ち1目の得となる。逆に白が最初のパスを行えば白が1目得となる。故に第4-2-5図に於いて、黒79の後白80をパスすれば中国式IIの計算で黒5目勝が、黒1/2目を減じ、白1/2目増加となり、4目の差となるのである。 又白が誤って80を打着すると、黒はすかさず81手をパスすれば白80が手止りとされて、結果は黒5目勝となる。これは白80をパスしなかった誤りのためである。 第4-1図にもどろう。黒はもしaへの打着を不要なものと読切れば、黒5はパスすればよい。そのときは白4が手止りとなるのである。又もし黒はaへの打着を必要と考えて、パスすることなく黒5でaへ打着すれば、白6をパスして黒5が手止りとなるのである。従って最初のパスの直前の打着を手止りとすれば、それは両対局者に公平にそれを判断する時機と方法を与えたこととなり、先に述べた如く、終局後にどの手が手止りであるかなどとの検討は不要となるのである。 |
第4-1図 |
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ややもすると“手止り”を形の上から定義しようとすると、それは死活の定義をするのと同じ様な困難さに遭遇する。私も初め、その様な手段によって手止りを定義しようとして失敗した。然しこの“先着の効果が失われた時”の存在に気がつき、これが極めて重要であり、かつ囲碁のルールの本質に関する問題であることに気づいたのである。 このことは実は日本式の慣習法の終局も結局は先着の効果が失われた時を終局としているのであり、この概念は台湾式と日本式のルールの共通の重要なポイントであって、私の提示した“新ルール案”が地とハマを中心としていながら、完全に台湾ルールと結果が一致する、という重大な事実が成立するのである。 |