4.3 台湾式ルールと新ルール案との関係

台湾式のルールに於いてはハマが得点にならないから、例え新ルール案の如く、第1パスの後、同数着手ルールによるペナルティは意味を失い、同数着手ルールをしてもその影響は全くない。即ち台湾式に打着を進めた結果と同じになる。従って台湾式のルールに従ったとして、最初のパスの後、新ルール案の仮終局後のルールをそのまま適用したとしても、その結果は完全に一致する。故に新ルール案の得点のルールのみを前記の“ルール7”に置代えれば、新ルール案は台湾ルールとなるのである。
そしてその結果が一致することを証明しよう。
第1表を見られたい。n路の碁盤に於いて、仮終局(台湾式では最初のパスと同じ意味となる)前に打着された打着数を黒m1、白m2(以下1は黒、2は白を示す)その時の置石数をli(i=1又は2)とすれば、除去された黒石はm1-l1、白石m2-l2である。仮終局後の打着された石をti、ペナルティパスをpiとし、終局のときの置き石数をqiとし夫々の地をsiとする。
仮終局後のハマはli+ti-qiであるからハマの計はmi+ti-qi+piとなる。
台湾式の得点は

黒の得点=q1+s1-1/2(m1-m2)

白の得点=q2+s2+1/2(m1-m2)

(最后の項はm1-m2=1なら黒が手止り、m1=m2なら白が手止りとなり、手止りによる1/2目の増減を示す)

故に黒の得点-白の得点≡D(台)
=(s1-s2)+(q1-q2)-(m1-m2)

となる。

第1表
n路の碁盤に於いて

仮終局までの打着数 仮終局のときの置石数 仮終局のときのハマ 仮終局後の打着数 ペナルティパス 終局のときの置石数 仮終局後のハマ ハマの計
m1 l1 m1-l1 t1 p1 q1 l1+t1-q1 s1 m1+t1-q1+p1
m2 l2 m2-l2 t2 p2 q2 l2+t2-q2 s2 m2+t2-q2+p2

同数着手ルールにより t1+p1 = t2+p2

新ルール案

黒の得点 = s1-m1-t1+q1-p1
白の得点 = s2-m2-t2+q2-p2
--------------------------------------
差 D = (s1-s2)+(q1-q2)-(m1-m2)

台湾式ルール

黒の得点 = q1+s1-1/2(m1-m2)
白の得点 = q2+s2-1/2(m1-m2)
------------------------------------
D = (s1-s2)+(q1-q2)-(m1-m2)

新ルール案による得点は

黒の得点=地-ハマ=s1-m1-t1+q1-p1

白の得点=s2-m2-t2+q2-p2

故に両者の差D(新)は

D(新)=(s1-s2)+(q1-q2)-(m1-m2)-(t1+p1-t2-p2)

然るに仮終局後の同数着手ルールにより

t1+p1=t2+p2 ∴t1+p1-t2-p2=0

∴D(新)=(s1-s2)+(q1-q2)-(m1-m2)

∴D(台)=D(新)

この如く、台湾式ルールと新ルール案は、得点ルールが一方は置石数と地であり、一方は地とハマでありながら、台湾ルールの“手止り”の項のために両者は完全に一致することが証明されたのである。
この証明の結果から、中国式は1/2目補正の項がないために、手止りを黒が打着したときは、台湾式及び新ルール案と1目の差を生ずる。しかもこれはn路の碁盤のnには無関係であることに注目すべきである。一部の人がnが奇数のために1目の差を生ずる如き解釈をしているが、これは誤りであることが示されたのである。
第2表は先に示した呉・宮本戦の数値を当はめたものである。

第2表
n = 9 呉・宮本戦

ハマのみ
m1=40 l1=31 t1=2 p1=1
q1=33 m1+t1-q1+p1=10 10
m2=39 l2=33 t2=2 p2=1 q2=27 m2+t2-q2+p2=15 11
D(新)=(10-10)-(11-15)=4 D(台)=(33+10)-(27+11)-1=4

目次 ルール試案
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